こんにちは、かねまるです!
実は最近、歩行訓練を行う利用者さんに『2本杖歩行』をおすすめしています。
いわゆるノルディックウォーキング用のポールではなく、普通の『T字杖2本』での歩行です。

最近あった出来事や過去に利用者さんと会話した経緯から、今は歩行訓練ならこれがベストかなと思っています。
(あくまでウチの利用者さんを見てきた範囲、私見です。)
今回は『2本杖で歩行訓練をするならT字杖がベストな理由』について解説します。
T字杖2本で機能訓練をする理由

理由は3つ有ります。
- 片手引きがないと恐怖感がある利用者さんの自立歩行訓練になる
- 片手杖で歪んでいる体幹バランスを整えながら歩行訓練が出来る
- 導入に抵抗感がない
元々はピックアップをうまく使うのが苦手な利用者さんの歩行訓練から考えたものです。
利用者さんの動作を矯正することは難しいので、環境から変える必要があると思いました。
そこでT字杖2本で歩いてみてもらうと、ピックアップと違い上手く使うことが出来たんです。
近畿理学療法学術大会の『両側T字杖使用によるすくみ足の改善について』についてでも、以下のように書かれていました。
2本杖歩行では支持基底面が前方に拡大し、歩行開始や方向転換時に下肢の振り出しが容易になり、すくみ足が軽減したと考えられた。さらに2本杖で歩行耐久性が向上した可能性として、すくみ足による転倒への恐怖心が緩和されたことによる呼吸の安定や酸素消費量の軽減、あるいは歩行運動自体の消費エネルギーの軽減が考えられた。屋外などを含む様々な環境下で利用しやすい両側T字杖歩行がすくみ足に対して有効である可能性が示唆された。
J-STAGE Articles – 両側T字杖使用によるすくみ足の改善について https://doi.org/10.14902/kinkipt.2007.0.70.0
ここからは、実際に利用者さんに試してみてもらったときのお話です。
どちらの方も両側T字杖にチャレンジしていただきましたが、すんなりと受け入れていただくことが出来ました。
ノルディックウォーキング用のポールと異なり、導入が簡単で使い慣れていることが大きなアドバンテージになったと思います。
手引きがないと怖くて歩けなくなっている利用者さん
- 自分で立ち座りが出来る
- トイレに行くときは一人で片手杖で行ける
- 他の場面では「歩けない」といって、手引きがないと歩こうとしない
平行棒を使った歩行訓練や、手引きでの杖歩行は怖がらずに出来ていました。
ただ、何よりも『恐怖感』が強いため、片手杖での自立歩行はなかなか出来ていない状態です。
そこでT字杖2本での歩行訓練をおすすめしてみました。
今までは室内歩行を片手引きや平行棒の往復に留めていましたが…
T字杖2本を試したところ…
なんと自立歩行で屋外も歩けました!
施設の表口から出てグルっと半周、裏口から戻ってくる形です。
若干の傾斜や段差もしっかりと歩けました。
介助も特に不要で見守りだけでしたね。
本人も

歩けた!ちょっと怖かったけど歩けて良かった!
と達成感を感じてくれていました。
股関節の手術をしてから患側に体重をかけれなくなった利用者さん
- 自分で立ち座り、片手杖での自立歩行ができる
- 体型はふくよかで、腰痛や膝痛がある
- 健側にばかり体重をかけているため、負荷が健側に集中している
こちらの利用者さんは股関節の術後、

しっかりと体重を患側にもかけなさい
と医師に言われていたのですが、恐怖感が強く健側に荷重が寄っていました。
そのせいか、今になって練習しようにも体重が患側に上手くかけられない状態に…
ちょうどT字杖2本での歩行訓練を他の方にもおすすめしていたので、こちらの利用者さんにも歩行訓練でおすすめしました。
実は以前から片手杖で歩くときに手引きをすると、しっかりと患側側の手にも体重をかけていました。
『これならT字杖を使って体重分散をすれば、今よりも左足に体重がかけられるんじゃない?』
と内心思っていたので、ちょうどよい機会でした。
本人の中で『これは練習する価値がある』と体感してもらえた
試したところ、
- いつもより長時間の歩行ができた
- 自分なりに体重を患側にかけれている感覚があった
といった点から、練習する価値があると思ってもらえたようです。

この杖、私の分も買ってくれない?
とまで仰って頂けたのはありがたかったですね。
ノルディックウォーキング用のポールは体重分散は出来ない

以前通っていた利用者さんに聞いた話です。

ノルディックウォーキング用のポールを使っていると背中が痛くなってくるから、散歩は止めた
というお話を聞きました。
そもそもノルディックウォーキング用のポールは、
山登り用のポールやステッキは「体重をかけたり、体を支えたりする用途」で使用されますが、ノルディック・ウォークポールは「平地で上半身を活用しながら歩くため」に使用します。
ノルディック・ウォーク用ポールって何が違う?ポール選びに役立つポールの特徴について|プロジェクトノート|羽立工業株式会社 https://hatachi.jp/note/detail/111
といった『体重をかける用途ではない』ものです。
それに対しT字杖は素直に体重を支える目的があります。
T字杖はあくまでも歩行のサポート用であり、体重の約6分の1までしか補助できないからです。
杖の種類と特徴|目的別に上手に選んで足腰への負担を軽減!|イリーゼ https://www.irs.jp/article/?p=289

このような点から、両下肢の筋力低下などから機能訓練が必要となっている場合、ノルディックウォーキング用のポールではなくT字杖での歩行訓練が好ましいと思います。
まとめ!!
- 2本杖で歩行訓練をするならT字杖がベスト
- 片手引きがないと恐怖感がある利用者さんの自立歩行訓練になる
- 片手杖で歪んでいる体幹バランスを整えながら歩行訓練が出来る
- 導入に抵抗感がない
- ノルディックウォーキング用のポールは体重分散は出来ない

『すくみ足の改善』や『体重分散』に一定の効果が確認できました。
平行棒で問題なく歩ける状態になっているけど、歩行器は出かける時に邪魔だし使いたくない…って人にはベストな選択肢かと思います。
歩行器を使わないで2本杖で歩く!ってなった場合、ちゃんとリュックは勧めましょう。
油断してると手提げバッグに2本杖なんて無茶もしかねませんからね^^;
ではまた!
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